ワンカット詰め合わせその2 オールジョニウド

スレチガイゲーム


 あなたが私のことを想う以上に、私があなたのことを想っている、ということを決してあなたに悟られてはならない。
 私の心を手に入れたと確信したと同時、あなたは私への興味を失ってしまうから。

 本当はあなたが好きで好きでたまらないのに、伝え、態度に表してしまえば、あなたにとってこの退屈しのぎの「ゲーム」は終了する。クリアしてしまえば見向きされなくなるのは当たり前。
だから私は自分からあなたに縋りたいのを押しとどめ、できる限り素っ気無く背を向けて眠る。まだあなたに最後のところまで落ちていないことを示すために。

 そうすると、決まってあなたが後ろから私を抱きすくめる。朝まで離すものかと力強く。首元に当たる唇の感触。私のにおいを貪欲に吸収しようとするかのような長くて深い呼吸。
 この温もりをこの愛しさを、朝目覚める時に味わえたならいいのにと願うけれど、あなたと一緒に過ごす夜をまだ継続させたいが為に、あなたが目覚める前に自分からその腕を抜け出す苦しさ。

 多分あなたが私に向ける気持ちは本物なのだろう。
 だけどそれは現在だけだ。過去は勿論のこと、未来に存在するはずなど無い。
 仮初の幸せを貪る往生際の悪い自分。

 あと幾度、こんなことが続くのだろうか。
 終わりは漠然と見えているだけに永遠を願ってやまない自分が、いる。


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口説いては陥落した途端、それで終了とばかりに、次から次へと恋人を乗り換えているジョニーさんを見てきたから、次は自分がそうなるのだろうと自覚してるウッドロウさん、みたいな。

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食い違わぬ彼らの願い


「俺とお前がずっと共にいられるように」
「ファンダリア国民の幸多からんことを」

 7月7日、七夕。
 二人一緒に天の川へ向かって願いをかけたのはいいが、その内容は見事に異なった。

「ウッドローウ…お前さん、なんだってそれは」
「国王として当然のことを願ったまでだが何か?」

 ジョニーとしてはウッドロウも当然自分と同じ(ような)願い事だと思っていたのに、肩透かしを食らって涙目になりたい気分になった。そんなジョニーを見て笑いながらウッドロウはフォローを入れる。

「あなたがそう願ってくれると思ったからこそ、私は安心して別の願い事をかけたんです」


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クリスマス後のメリークリスマス


 12月26日深夜。
 今年の聖誕祭も無事に終えることができたことに胸をなでおろす。
 日付が変わる直前まで後始末の指示出しに走り回り、25日がすでに過ぎ去って1時間以上が経過し、やっとウッドロウは自室に戻った。
 ドアの隙間から明かりが漏れているのが見て取れる。こんな夜中に、国王である自分の私室に潜り込む人物は一人しか心当たりがない。
 ゆっくりと部屋に進入する。

「お疲れ」

 部屋にいた人物がウッドロウにすぐ気付き、柔らかな笑みとともにねぎらいの言葉をかける。腰掛けていたソファから立ち上がり、読んでいた雑誌をテーブルの上にパサリと投げ置く。
「待っていて下さったんですか」
「勿論。ってか今年はそこから入るか。確か去年は」
「今年も来て下さったんですか、だったか」
「そ。んでそれ以前は」
「どうしてあなたがここにいるのか?だった」
「正解だ」
 聖誕祭当日のウッドロウはとてもではないが私用にかまける暇など1分1秒もない。そのことを彼―ジョニーもわかっているから敢えてウッドロウを訪ねることはしない。邪魔になるだけだしウッドロウの短い休息時間を奪うことになるからだ。この世界の始まりとされる特別な日に一緒に過ごしたいと思うのは二人共通の願いではあるけれど、幾多の人々の幸せを担う為に私欲は捨て去らなければならない。
だ、そうは言ってもなるべく雰囲気が覚めやらぬうちに会いたいと願うのは同じ人の子として罪にはならないはずだから。
から、この夜明けまでのわずかなこの時は。

「メリークリスマス、ウッドロウ」
「メリークリスマス、ジョニーさん」

 互いの温もりを感じあう、幸せなひと時を。


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腹が減ったから


 二の腕の中腹あたりを上唇とした唇で食まれた。皮膚に前歯と舌先が軽く当たり、湿った感触が皮膚に残される。
「んー」
「何を、唐突に」
 お互い特に「したい」雰囲気では無い。その証拠にそれは情欲をそそる様なやり方じゃない。子どもが親に甘えているみたいな感じだ。
「何となく、紛れるから」
 と言いながら口は止まらずはむはむ動く。いい大人が人の腕にすがり付いて唇を寄せている図は少々不気味だ。
「何がです?」
「腹の虫」
 聞けば素っ頓狂な返事が帰ってきた。思わず目が点になる。
「腹が減ったからお前を食べてるんだ」
「…あなたはいくつになったんですか?」
「知らないのかい、人間25を過ぎると一番好きな人間を食べるふりをしたら、空腹を紛れさせることができるんだぜ」
「馬鹿なことを言ってないで、行きますよ。食堂へ」
 食まれていた腕を引き剥がし、代わりに相手の腕を捕まえて引っ張っていった。

 今日も二人は平和です。


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