世界から二人が欠落した


冷厳なる冬の呪縛から逃奔し、今は己が身体が蕩けるに至るまでの熱に囲われた地にて、日々を重ねる。

明らかに異国からの来訪者である二人に、地元の衆は奇異の目を向けるだけで、誰も近づく者はいなかった。多少居辛さを感じるがむしろ見放してくれている方が二人にはありがたかった。

外に出る用事が無ければ、昼夜問わず、互いを欲し愛の言葉を並べ立て、身体を交える。

この地では水が貴重だから、汗水に塗れ白い体液から男の濃い臭気が立ち上ろうとも、そうしょっちゅう身体を清めることはままならない。だがそんなことを言い訳にして相手を求めることをしないような、綺麗ごとの恋をしている二人ではなかった。

二人とも、本来は他の誰かと添わねばならない身分であった。だけどもう互い以外の、他の誰かを受け入れる選択肢など選ぶことができず、そして終には生まれ故郷から地位から名声や人間関係、何もかもを捨てた。
その代わりかけがえの無いものだけは無事手元に残ったというわけである。

彼らを咎める者は、もういない。時にその無関心が二人にとって一番の罰となることがあるだろう。それでも二人だけでいる孤独を選んだことに恐れをただの一度も感じなかった。魂の片割れともいえる目の前の彼を失うことへの恐怖と絶望の方が大きかったから。

「ジョニーさ……ん、あ……あ…好き」
「愛してる、愛してるよ、ウッドロウ」

狂ってしまった二人だと、世界中から蔑まれてたとしても、そんなことはどうでもいい。
己の飢えと渇きを癒し、欲を満たすのは目の前の彼以外に有り得ないのだから。


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memoに綴ったものを編集しました。戦後、何もかもを捨てて一緒になったジョニーとウッドロウ、なイメージ。
落ち延びたのはカルバレイスのどっか。
※一部タイトルを変更しました

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